2006年6月13日(火) 信濃毎日新聞の記事
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丸太にのみを当てて、クイクイと彫り進めていく。長野市、ながの東急シェルシェで開催中の信州木工会「ものつくり展」の会場だ。木曽町の西村克之さんが熊のトーテムポールを作っている
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長野県内の木工作家32人による展覧会だ。今年で17回になる。会員合作の「引き出し24」にはその数だけ引き出しが付いている。テーブル、いす、飾り物などそれぞれに作者の個性が表れる。手間をかけただけに使いやすそうで、安らぎが感じられる
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会場で配布の信州木工会の冊子に、会員の生き方や意気込みが載っている。作品に一目ぼれした若い女性が安くはないので悩んだ末買ってくれたら、ずっと気に入って使ってもらえ、娘や孫娘にまでかわいがられる…。松本市の惣洞(そうぼら)久美子さんは、そんな家具を目指していると書く
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北海道弟子屈町在住の西川栄明さんは信州の木工家25人を訪ね「木の匠(たくみ)たち」(誠文堂新光社)にまとめた。小諸市に住む信州木工会会長、谷進一郎さんを紹介。ちょうなを使ったり李朝家具に学んだりしながらオリジナルな作品を作る姿を描いている
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本では、信州木工会以外の人も数多く取り上げた。信州木工のすそ野は広く、職人層が厚いと西川さんはみる。〈いつからこんな使い捨て文化になったのか〉と木工家の声も聞こえる。出品作には手作りの温かさがある。これなら、使うほどに愛着が増す。 |